このページの要点
- 小さな会でも、名簿を事業の用に供していれば個人情報取扱事業者に当たり得る。条文に件数による除外はない(個人情報保護法16条2項)。
- 本人から書面で直接集める入会届では、利用目的をあらかじめ明示する(同法21条2項)。名簿の配布、連絡網、写真の掲載は具体的に書き、項目ごとに同意を選べるようにする。
- 病歴や障害などは要配慮個人情報にあたり得る。取得にはあらかじめ本人の同意が要るため、聞く項目は行事に必要な範囲に絞る(同法2条3項、20条2項)。
- 認可地縁団体は構成員名簿の備置き(地方自治法260条の4第2項)、NPO法人は社員のうち10人以上の氏名・住所の書面の備置きと閲覧(特定非営利活動促進法28条)と、型で義務が違う。
結論:名簿は「何のために、誰に、どこまで見せるか」を先に決め、入会届と会則に書く
会員名簿は、会を動かす道具であると同時に、会員一人ひとりの氏名・住所・電話番号・家族構成といった個人情報の集まりです。連絡網をつくる、行事の案内を送る、防災や見守りに使う、会費の納入を確かめる、といった目的で、役員が世話役として預かっているのが実情でしょう。ところが、名簿をどこまで会員に配ってよいか、LINEグループに招待するときに同意は要るか、写真をホームページに載せてよいか、退会した人の情報をいつ消すかについては、決まりを置いていない会が少なくありません。
この問題を整理する軸は三つです。第一に、名簿が個人情報保護法の対象になるかどうか。第二に、対象になるかどうかにかかわらず、利用目的を示して集め、その範囲で使うこと。第三に、団体の型によっては、名簿を備え置くこと自体が法律の義務になっていることです。この三つを分けて考えると、「配ってよいか」という漠然とした不安が、会則や入会届に書く具体的な文言に落ちていきます。
先に結論を一覧にします
- 小さな会でも、名簿を「事業の用に供している」と評価されれば、個人情報取扱事業者として義務を負い得ます。条文には、件数による除外は置かれていません(個人情報保護法16条2項)。
- 入会届のように本人から書面で直接情報を集める場面では、利用目的をあらかじめ本人に明示します(同法21条2項)。名簿の作成、連絡網、行事の案内、会員への配布は、目的として具体的に書きます。
- 会員に名簿を配る、LINEグループで氏名や連絡先を見える状態にする、といった行為は、第三者提供に当たるかが問題になります(同法27条)。同意を入会届の段階で取っておくのが運用上の基本です。
- 病歴や障害など、本人が伏せたい情報は要配慮個人情報にあたり得ます(同法2条3項)。取得にはあらかじめ本人の同意が要ります(同法20条2項)。世話役が「念のため」で聞く項目は絞ります。
- 認可地縁団体は構成員名簿を備え置く義務があり(地方自治法260条の4第2項)、NPO法人は社員のうち10人以上の氏名・住所を記載した書面を備え置き、社員などの閲覧に応じます(特定非営利活動促進法28条)。型によって、名簿の位置づけが違います。
なお、このページは名簿・連絡網・写真など「構成員が出し合う情報」を団体が預かる場面に絞っています。事業者が顧客の情報を集めるときのプライバシーポリシーの作り方とは前提が違うため、そちらは扱いません。会員になる資格や退会の手続は入会・退会・除名の書き方、名簿の引継ぎは解散・引継ぎのページで整理しています。
小さな会でも「個人情報取扱事業者」に当たるのか:16条の読み方
個人情報保護法の義務の多くは、「個人情報取扱事業者」に向けられています。その定義は、個人情報データベース等を事業の用に供している者です(16条2項)。ただし書で除かれるのは、国の機関、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人の四つだけで、会員数が少ないこと、営利を目的としないこと、法人格がないことを理由とする除外は条文に置かれていません。
ここで読み方が分かれるのは、二つの言葉です。一つは「個人情報データベース等」で、個人情報を含む情報の集合物のうち、電子計算機で特定の個人情報を検索できるように体系的に構成したもの、またはそれに準じて容易に検索できるように体系的に構成したものとして政令で定めるものをいいます(16条1項)。表計算ソフトの名簿やアドレス帳アプリはもちろん、五十音順に整理した紙の名簿も、政令の定め次第で当たり得ます。もう一つは「事業の用に供している」の意味です。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、「事業」を、一定の目的で反復継続して行われる同種の行為で社会通念上事業と認められるものとし、営利・非営利の別は問わないとしています。法人格のない団体(任意団体)や個人であっても、個人情報データベース等を事業の用に供していれば個人情報取扱事業者に当たり、データベースを構成する人数が少ないことも関係しません。同委員会のQ&Aでも、NPO法人、自治会・町内会、同窓会、PTAなどの非営利団体が個人情報取扱事業者に当たり得ると示されています。
実務の考え方としては、「当たるかどうか分からないから何もしない」ではなく、「当たるものとして最低限の運用をそろえる」ほうが安全です。利用目的を示す、目的の範囲で使う、配る前に同意を取る、保管に気をつける、という運用は、義務の有無にかかわらず、会員との信頼を守るうえで必要なことだからです。
条文の早見:名簿の入口で読む条文(現行の規定)
- 個人情報保護法16条1項個人情報データベース等の定義。電子計算機で検索できるように体系的に構成したもの、または容易に検索できるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの
- 同法16条2項個人情報取扱事業者の定義。個人情報データベース等を事業の用に供している者。国の機関・地方公共団体・独立行政法人等・地方独立行政法人は除く
- 同法16条3項個人データの定義。個人情報データベース等を構成する個人情報
- 同法2条3項要配慮個人情報の定義。人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などで、不当な差別や偏見が生じないよう特に配慮を要するもの(政令で定める記述等を含む)
「事業」は営利・非営利を問わず、法人格のない任意団体も対象になります(個人情報保護委員会ガイドライン通則編・Q&A)。名簿が検索できる形で、会の活動のために反復して使われているかが、当てはまりの分かれ目になります。
確認の問いと理由自分の会は対象になるのか、を確かめるための問い
名簿は、検索や並べ替えができる形(表計算・アプリ・五十音順の綴り)になっているか
個人情報データベース等は、検索できるように体系的に構成されていることが要件です。手書きのメモが散らばっている状態と、検索できる名簿とでは評価が変わり得ます。
名簿を、会の活動のために反復継続して使っているか
「事業の用に供している」の読み方を確かめるときの手がかりです。一度きりの行事の参加者リストと、毎年更新して連絡に使う名簿とでは、使われ方が違います。
名簿を、会員以外の人や外部のサービスに渡す場面があるか
行事の運営を手伝う外部の人、会計ソフト、連絡アプリなどに情報を入れると、委託先の監督や第三者提供の問題が出ます(同法25条・27条)。
会則や入会届に、名簿の目的と範囲が書かれているか
書かれていなければ、利用目的の特定(同法17条)と明示(同法21条2項)の入口が欠けています。まず書くことから始めます。
利用目的の書き方:入会届と会則に入れる文言
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うにあたり、利用目的をできる限り特定しなければなりません(17条1項)。変更するときも、変更前の目的と関連性があると合理的に認められる範囲を超えてはいけません(17条2項)。そして、契約書その他の書面に記載された本人の個人情報を取得する場合など、本人から直接書面で個人情報を取得するときは、あらかじめ本人に利用目的を明示する必要があります(21条2項)。入会届は、この「本人から直接書面で取得する場面」の典型です。
利用目的を決めずに集めた名簿は、あとから「そのために使うつもりではなかった」という会員の不満につながりやすく、目的の範囲を超えた利用には本人の同意が要ります(18条1項)。たとえば、連絡網として集めた電話番号を、特定の役員の個人的な勧誘や、別の団体の案内に使うことは、目的の範囲を超えるおそれがあります。会員になる際の約束事として、目的を具体的に書いておくことが、役員の側を守ることにもなります。
会則の例会員の個人情報の取扱い(目的・範囲・保管)
- 本会は、会員の氏名、住所、電話番号、メールアドレスその他入会届に記載された情報(以下「会員情報」という。)を、次の目的のためにのみ利用する。(1)会員名簿の作成と管理、(2)総会その他の会議の通知、(3)行事、会報その他の案内の送付、(4)会費の請求と納入の確認、(5)災害時その他の緊急の連絡。
- 本会は、前項の目的の範囲を超えて会員情報を利用しようとするときは、あらかじめ本人の同意を得る。
- 本会は、会員名簿を、会員相互の連絡のために必要な範囲で会員に配布することがある。配布する項目は氏名と連絡先のうち、入会届で本人が同意した項目に限る。本人は、配布に同意しないことができる。
- 会員情報の管理は、会長が指名した役員が行う。役員は、役員の任を離れたときは、速やかに管理する会員情報を後任に引き継ぎ、手元の写しを廃棄する。
- 退会した会員の情報は、会費の精算その他退会に伴う手続が終わった後、○か月以内に削除する。ただし、法令または会則により保存が必要なものは、その期間保存する。
配布に同意しない選択肢を設ける、役員の交代時の廃棄を書く、退会後の保存期間を決める、の三点が、実務で効きます。数字は会の実情に合わせて「○か月」のように会則に書き込みます。
目的は細かく列挙しすぎる必要はありませんが、「会の運営のため」とだけ書くのでは特定とはいえません。上の例のように、通知、案内、会費、緊急連絡といった具体的な使い道を並べると、あとから別の使い方をしたくなったときに、同意を取り直す必要があるかどうかの判断もしやすくなります。
書き方の例(一般的な例) 入会届の個人情報欄
利用目的の書き方
理由「運営のため」では、何に使われるのかが会員に伝わりません。目的を並べておけば、17条の特定と21条2項の明示の両方を満たしやすくなります。
名簿の配布
理由「入会したら同意したとみなす」は、同意の内容が本人に見えません。項目ごとに選べるようにすると、同意が具体的になり、後からの苦情も減ります。
役員の交代
理由名簿は、前任者個人のものではなく会のものです。引継ぎと廃棄を書いておくと、流出や目的外利用の芽を摘めます。
名簿の配布・連絡網・LINEグループ・写真:場面ごとの考え方
個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはなりません(27条1項)。「第三者」は会の外の人だけではないか、と思われがちですが、名簿を会員に配る場合、配られる会員は会という事業者から見れば別の個人です。会員どうしの連絡のために名簿を配るのか、役員だけが持つのかで、考え方が変わります。
例外として、人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときは、同意なしに提供できます(27条1項2号)。大きな災害で安否確認が必要になった場面は、これで説明できる余地があります。ただし、日頃から名簿を広く共有する根拠にはなりません。日常の運用は、同意を前提に組み立てます。また、利用目的の達成に必要な範囲で取扱いの全部または一部を委託する場合の委託先は、第三者に当たりません(27条5項1号)。会計や名簿の発送を外部に頼む場合は、提供の同意ではなく、委託先の監督(25条)の問題として整理します。さらに、特定の者との間で共同して利用する個人データを、その旨、共同して利用する個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的、管理について責任を有する者の氏名または名称(法人は代表者の氏名を含む)をあらかじめ本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いたうえで提供するときは、その提供を受ける者は第三者に当たりません(共同利用。27条5項3号)。同じ会の役員会どうしや、会と連携する団体との間で名簿を共有する場合は、この形に当たるかを検討します。
場面別:何が問題になり、何を入会届・会則に書いておくか
| 場面 | 問題になる点 | 書いておくこと |
|---|---|---|
| 名簿を会員全員に配る | 会員が持つ他の会員の氏名・住所・電話番号は、第三者提供に当たるかが問題になる。配布の範囲が広いほど苦情につながりやすい | 配布の目的(会員相互の連絡)、配る項目、同意しない選択肢。班や地区ごとの配布にとどめる運用も考えられる |
| 緊急連絡網 | 連絡網の隣の人にだけ電話番号を伝える形でも、提供には変わりない。共有する範囲を知らないまま載せられた会員が不満を持つ | 連絡網に載せる目的(災害時・行事の中止連絡)、載せる項目、載せない選択肢。連絡の手段の代替(連絡を受ける人を役員に集約する) |
| LINEなどのグループ | 表示名・アイコン・電話番号の見え方、グループ外の人の招待、退会後の履歴の残り方。外部サービスの運営者への情報の預け方も論点になる | グループの目的、参加は任意であること、グループ内の情報を外へ出さない約束、退会時の退出。管理者となる役員の指名 |
| 行事の写真・動画 | 顔が写った写真は個人情報になり得る。会報やホームページ、SNSへの掲載は、利用目的の特定と同意の問題に加え、本人の人格的利益の問題にもなる | 撮影すること、掲載媒体の種類、掲載したくない場合の申出方法、子どもの写真は保護者の意向を確認する旨。掲載後に削除を求められたときの取扱い |
| 役員への報告・行政への提出 | 法令に基づく提出は同意を要しない場合がある(27条1項1号)が、法令の根拠がないのに任意で渡すものは別 | 提出する場面と範囲。根拠となる法令または依頼の文書を確認してから渡す手順 |
| 外部の業者への発送作業の依頼 | 利用目的の達成に必要な範囲の委託は第三者提供に当たらない(27条5項1号)が、委託先の監督が必要(25条) | 委託先に渡す項目を必要最小限にし、目的外に使わない約束を文書で取る |
写真については、個人情報保護法の条文だけで割り切れない面があります。写っている人の顔が識別できる写真は、特定の個人を識別できる情報として、個人情報に当たり得ます(2条1項)。それとは別に、自分の姿が望まない形で公開されないことは、法律上の保護を受け得る本人の利益でもあります。そのため、法律上の整理にとどまらず、「載せる前に聞く」「載せたくない人の意思を尊重できる仕組みにする」という運用を会則に落とし込むのが現実的です。
未成年者の情報や写真を扱う場合に、保護者の同意が必要になる年齢や手続は、個人情報保護法の条文には書かれていません。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)には、同意の取り方に関する考え方が示されているため、子どもが参加する会では、そこを確認したうえで、保護者に同意を取る様式をそろえます。
聞いてよい情報、聞かない方がよい情報:要配慮個人情報と「念のため」の項目
入会届や参加申込書を作るとき、世話役は「何かあったときのために」と、持病、アレルギー、介助の必要、家族の状況などを書いてもらいたくなります。気持ちは分かりますが、これらは要配慮個人情報に当たり得ます。要配慮個人情報とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他、不当な差別や偏見が生じないよう取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報です(2条3項)。信条には宗教や政治的な考え方も含まれ得るため、「どの宗教の行事に参加するか」といった質問にも注意が要ります。
取得のルールも通常の個人情報より厳しく、法令に基づく場合など一定の例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはなりません(20条2項)。同意を得ればよいのだとしても、「聞く必要があるか」を先に問うべきです。聞くなら、何のために、どの範囲の役員だけが見るのかを、本人に分かる形で説明します。
確認リスト:参加申込書・入会届に載せる項目を決める
- その項目は、会の運営に本当に必要か。必要でなければ項目を削る。
- 病歴・障害・アレルギーなどを聞く場合、行事ごとに別の様式にし、その行事の責任者だけが見る扱いにする。
- 回答は任意であること、答えなくても不利益に扱わないことを、様式に書く。
- 行事が終わった後の保管期間と廃棄の方法を決める。
- 宗教・政治・出身・世帯の収入など、会の目的と関係の薄い項目は設けない。
- 子どもの情報は、保護者の記入であること、保護者の連絡先を併せて記載することを様式にそろえる。
会員の宗教や政治的な信条に関する情報を集めること自体は、会の性質によっては避けられない場合もあります。たとえば、NPO法人は特定の政党のために利用してはならず(特定非営利活動促進法3条2項)、認可地縁団体も同様です(地方自治法260条の2第9項)。だからといって、会員一人ひとりの信条を名簿で把握する必要が生じるわけではありません。禁止事項は行為(団体の名義での勧誘や活動)に対して置き、会員個人の信条を尋ねる形にはしないのが原則です。
団体の型で変わる名簿の備置きと閲覧:任意の会・認可地縁団体・NPO法人
名簿に関する決まりは、団体の型によって、法律の義務の有無が変わります。この違いを知らないと、「名簿は誰にも見せない」と決めた会則が、認可地縁団体やNPO法人では法律と食い違うことがあります。
型ごとに比べる:名簿についての法律の定め
任意の同好会・サークル
個人情報保護法(16条・17条・21条・27条)
- 名簿を備え置く法律上の義務は、団体法の側にはない
- 名簿の扱いは、個人情報保護法の「事業」に当たるかの確認と、会則・入会届の定めで決まる
- 名簿の備置き・閲覧は会則で自由に設計できる
認可地縁団体
地方自治法260条の4第2項
- 構成員名簿を備え置き、構成員の変更があるごとに必要な変更を加える義務がある
- 名簿の目的外利用や外部への提供は、個人情報保護法の対象かを別に確認する
- 区域内の個人の加入を正当な理由なく拒めない(260条の2第7項)ことは、名簿の更新の運用に関わる
NPO法人
特定非営利活動促進法10条・28条・30条
- 社員のうち10人以上の氏名・住所を記載した書面を、事業報告書等として毎事業年度作成して事務所に備え置く(28条1項)
- 社員その他の利害関係人から閲覧請求があれば、正当な理由がない限り閲覧させる(28条3項)
- 所轄庁が公開する際は、個人の住所に係る部分を除く(30条)
NPO法人が備え置くのは、社員全員の名簿そのものではなく、社員のうち10人以上の者の氏名・住所を記載した書面です。閲覧の対象も条文に列挙された書類で、全社員の連絡先をいつでも見せなければならないという意味ではありません。
認可地縁団体の構成員名簿は、区域内の住民が構成員である団体の性質上、ほぼ全世帯に近い規模になることが多く、個人情報としての重みも大きくなります。名簿を備え置く義務があることと、備え置いた名簿を誰がどの範囲で見られるかは別の問題です。規約や細則で、名簿を閲覧できる人と目的を決めておくのが現実的です。具体的な規約の項目は、自治会・町内会と認可地縁団体のページで整理しています。
NPO法人の場合は、役員名簿や定款などとあわせて、社員などの利害関係人が閲覧できる書類が条文で決まっています。会員向けの名簿の配布と、法律上の閲覧請求への対応は、別の制度として整理しておきます。定款と運営規程の分け方はNPO法人の定款・会則・運営規程のページにまとめています。
保管・外部サービス・退会者の情報:安全管理と削除のルール
個人情報取扱事業者は、取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損の防止その他の安全管理のために、必要かつ適切な措置を講じなければなりません(23条)。大がかりな仕組みを求められているわけではなく、会の規模や取り扱う情報に応じた対策を取ればよいと読むのが自然です。具体的には、次の五つが基本になります。
小さな会で実行できる安全管理の流れ
- 持つ人を決める名簿を管理する役員を会則で決める。複数のコピーが役員の手元に散らばる状態をやめ、元の名簿は一か所に置く。
- 見せる範囲を決める全員に配る名簿と、役員だけが持つ名簿を分ける。電話番号や緊急連絡先は、必要な役員だけが見る。
- 保管と持ち出しのルールを決める紙は施錠できる場所に、データはパスワードを付けて保管する。個人のスマートフォンやメールに保存する場合は、役員を交代するときに消す約束にする。
- 外部サービスの使い方を決める連絡アプリやクラウドの共有フォルダに入れる情報を絞る。サービスの運営者が外国にある場合などは、個人情報保護委員会のQ&Aで取扱いを確認する(28条、25条)。
- 退会者・不要になった情報を消す利用する必要がなくなった個人データは、遅滞なく消去するよう努める(22条)。会費の精算など、必要な期間を会則に書く。
会計の帳簿や領収書に会員の氏名が残る場合など、消せない情報もあります。消せないものは、保存の目的と期間を決めて、閲覧できる人を限ります。
外部のサービスを使う場合、預けた情報が国外のサーバーで管理されることがあります。個人データを外国にある第三者に提供する場合は、一定の例外を除き、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意が必要です(28条1項)。ただ、クラウドに預けることがここでいう「提供」に当たるのか、取扱いの委託として整理できるのかは、サービスの仕組みによります。契約上、運営者が個人データを扱わない構成になっているかも含めて、個人情報保護委員会のQ&Aと、サービスの利用規約を確認してから判断します。判断がつかない場合は、外部サービスに入れる情報を氏名と連絡先のうち必要最小限にとどめる、という運用で足りることが多いはずです。
漏えいなどの事態が生じた場合の報告や本人への通知の義務があるのは、個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものです(26条)。会の規模が小さくても、名簿の紛失や誤送信が起きたときの初動を決めておくと、慌てずに済みます。初動の流れは、会則・総会・会費をめぐるトラブルのページでまとめます。
退会者の情報は、退会届を受け取った日に全てを消せるとは限りません。未納の会費がある、行事の保険の手続が残っている、といった場合は、その手続が終わるまで保持する正当な理由があります。会則に「手続が終わった後○か月以内に削除する」と書いておけば、保存の理由と期間が明確になります。会員から自分の情報の開示や利用停止を求められたときのために、窓口となる役員を決めておくのも有効です(33条・35条は、保有個人データについての本人の請求権を定めています)。
起きがちなこと:名簿をめぐる場面別の落とし穴
起きがちなこと
- 名簿を前任者が持ち続ける。役員が交代しても、前任者の自宅に名簿の写しが残り、別の用途に使われたり、紛失したりする。引継ぎと廃棄の約束を会則に書いておく。
- 入会届に利用目的がない。後から「そのために出したのではない」と言われたとき、会の側が説明できない。目的を並べた欄を作る。
- LINEグループの招待を本人に確かめない。本人に確かめないまま招待し、電話番号や表示名が他の参加者から見える状態になる。招待は、本人の意向を確かめてから行う。
- 写真を、本人に聞かずに掲載する。顔が分かる写真が、会報やホームページに載り、削除の依頼で揉める。掲載の前に聞く様式をそろえる。
- 「念のため」で健康情報を集める。聞いた情報を誰が見て、いつ消すのかが決まっておらず、紛失や目的外利用のリスクだけが残る。聞く場面を行事ごとに限る。
- NPO法人や認可地縁団体なのに、名簿の備置きや閲覧の定めがない。会則を見直さないまま、法律上の義務と会則の定めが食い違う。型ごとの義務を一度確認する。
- 退会者の情報を、そのまま保管し続ける。必要がなくなった情報は消すよう努める(22条)一方で、消せない帳簿上の記録もある。保存の期間と理由を決める。
名簿の問題は、「誰かが悪いことをした」ときよりも、「善意で集め、善意で配った」結果として起きます。会則と入会届で、目的・範囲・保管・削除を先に決めておくことが、役員にとっても、会員にとっても、いちばん有力な予防策になります。総会で名簿の扱いを決める手順は総会の開き方と議事録のページ、行事の写真や緊急連絡先を含む参加同意書は行事・活動中の事故と責任のページで扱います。
よくあるご質問
小さな同好会で、会員名簿を作るだけでも個人情報保護法の対象になりますか。
個人情報保護法の義務を負う個人情報取扱事業者は、個人情報データベース等を事業の用に供している者と定義され、会員数や営利目的の有無による除外は条文に置かれていません(16条2項)。名簿が検索できるように体系的に構成されていて、会の活動のために反復して使われているなら、当たり得ます。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)とQ&Aは、「事業」は営利・非営利を問わず、法人格のない任意団体も対象になるとしています。自治会・町内会、同窓会、PTA、サークルなども、名簿を事業の用に供していれば当たり得ます。当たるかどうかにかかわらず、利用目的を示し、その範囲で使い、配る前に同意を取る運用をそろえておくことをおすすめします。
会員名簿を会員全員に配るとき、同意は必要ですか。
会員に名簿を配る行為は、他の会員への個人データの提供として、27条1項の「第三者提供」に当たるかが問題になります。同意なしに提供できる例外は限られているため、入会届の段階で、名簿を会員に配ること、配る項目、同意しない選択肢を示して同意を得るのが基本です。同意しなかった会員の情報は、配布用の名簿から外します。
LINEグループに会員を招待するとき、本人の同意は要りますか。
電話番号や表示名が他の参加者から見える仕組みのため、招待の前に本人の意向を確かめるのが望ましいといえます。グループの目的、参加は任意であること、グループ内の情報を外に出さないことを案内し、本人が参加を選んだ記録を残します。サービスの運営者が外国にある場合は、委託先の監督(25条)や外国にある第三者への提供(28条)の問題になり得ます。
病気やアレルギーを申込書に書いてもらうことは問題ですか。
病歴などは要配慮個人情報にあたり得ます(2条3項)。取得にはあらかじめ本人の同意が必要です(20条2項)。聞くこと自体が禁じられるわけではありませんが、行事の安全に必要な範囲に絞り、回答は任意で、見る人を限り、行事後に廃棄する、という運用とセットにします。
認可地縁団体やNPO法人の名簿は、会員に見せなければなりませんか。
認可地縁団体は構成員名簿を備え置く義務があります(地方自治法260条の4第2項)。条文は備置きと更新を定めており、会員への閲覧の範囲は規約で定めます。NPO法人は、社員のうち10人以上の氏名・住所を記載した書面を事業報告書等として備え置き(特定非営利活動促進法28条1項)、社員その他の利害関係人から閲覧の請求があれば、正当な理由がない限り閲覧させます(同条3項)。全社員の名簿を誰にでも見せるという意味ではありません。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の団体への当てはめは、団体の種類(法人格の有無、認可の有無)や会則の定めによって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、会則作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の団体や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で現行の規定を確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 総務省 / 内閣府NPOポータルサイト / 個人情報保護委員会